2016年9月13日
私が入院した大学病院では、全国の主要な病院が共同でより良い治療法を開発するための研究組織であるJALSG(特定非営利活動法人成人白血病治療共同研究支援機構)で共同して行っている臨床試験「APL212プロトコール」による治療を選択していました。
治療の流れ
APL212プロトコールの治療の流れは以下の通りです。
【寛解導入療法】入院治療
血液学的完全寛解を目指します
ATRA(ベサノイド)内服(30~60日間)
白血球数と白血病細胞数に応じて、イダルビシンとシタラビンによる化学療法を併用
治療開始時の白血球数が3,000未満の場合は、ATRAのみで治療スタートです。3,000を超えている場合は、最初から化学療法併用になります。
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【地固め療法】入院治療
分子学的完全寛解を目指します
1コース目:ATO(トリセノックス)点滴(5日/週、5週間)
2コース目:イダルビシンとシタラビンによる化学療法
3コース目:ATO(トリセノックス)点滴(5日/週、5週間)
骨髄が回復した時点で脊髄液検査と髄腔内へのキロサイド、メソトレキセートの注入(髄注)
4コース目:GO(マイロターグ)点滴を2回
それぞれのコースの間に、外泊または一時退院を挟みます。
トータルで、4~5ヶ月かかります。
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【維持療法】通院治療
残っているかもしれない白血病細胞を完全に無くすことを目指します
Am80(アムノレイク)の内服(14日/3月、8コース)
3ヶ月毎に2週間薬を飲みます。
それを8回繰り返すので、維持療法だけで2年近くかかります。
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【経過観察】通院(2年間)
通院で検査をします。
通院間隔は、病院や主治医によって様々です。
基本的に血液検査のみですが、骨髄検査(マルク)が追加になることもあります。
特殊検査項目と時期
APL212プロトコールでの治療の際、いくつかの特殊検査を行います。
検査項目の中には、保険適用外のものも含まれますが、この臨床試験に参加している場合はJALSG等が費用を負担するため、患者の負担はありません。
検査項目
保険適用検査
- 骨髄像
- 染色体
- TAT PIC α2-PI、plasminogen、total PAI-I
- 表面マーカー
- WT-1
- 髄液検査
保険適用外検査
- PML-RARA
- FLT3/ITD
- TAFI
- Histone H2B,Annexin Ⅱ
検査時期
治療前
- 保険適用検査
1.骨髄像 2.染色体 3.TAT PIC α2-PI、plasminogen、total PAI-I 4.表面マーカー 5.WT-1 - 保険適用外検査
1.PML-RARA 2.FLT3/ITD 3.TAFI 4.Histone H2B,Annexin Ⅱ
この検査で、PML-RARA(融合遺伝子転写物)が認められない場合は、この臨床試験に参加することが出来ません。
地固め治療1コース前
- 保険適用検査
1.骨髄像 5.WT-1
地固め治療2コース前・3コース前
- 保険適用検査
1.骨髄像
地固め治療4コース前
- 保険適用検査
1.骨髄像 6.髄液検査
6.髄液検査は、マルク(骨髄穿刺)ではなく、髄注によって行います
地固め治療4コース後
- 保険適用検査
1.骨髄像 5.WT-1 - 保険適用外検査
1.PML-RARA 3.TAFI
維持療法2コース後・4コース後・8コース後
- 保険適用検査
1.骨髄像 5.WT-1(来院時、適宜施行) - 保険適用外検査
1.PML-RARA
WT-1のうち、来院時に行うものは、マルク(骨髄穿刺)ではなく末梢血での検査です
経過観察1年後・2年後
- 保険適用検査
1.骨髄像 5.WT-1(来院時、適宜施行) - 保険適用外検査
1.PML-RARA
WT-1のうち、来院時に行うものは、マルク(骨髄穿刺)ではなく末梢血での検査です
同意と撤回
病院から説明を受け、臨床試験の内容を理解したうえで、同意書を提出した後に、この治療がスタートします。
また、いつでも同意の撤回をすることが出来ます。
中止の条件または理由
以下の場合、APL212による治療を取り止めます。
- 寛解導入療法およびそれに引き続く地固め第1コース施行にても寛解が得られない症例
- 寛解後、現病(APL)の再発を認めた症例
- 重篤な毒性の出現、全身状態の悪化により、計画した治療の継続が困難と判定された場合
- 患者から試験中止を申し出た場合、あるいは同意の撤回があった場合
- 担当医が試験の継続が不適当と判断した場合
私は、地固め治療に入る前に臨床試験から外れることになりました。
この時、理由としては上記の5.になりますが、4.の同意の撤回をするという方法で手続きを行いました。(一番シンプルで簡易的だったため)
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